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鉄道廃線トンネルの世界 【碓氷峠編】花田欣也

碓氷峠のトンネル。トンネルと鉄道を深く愛する私にとってそれは憧れの存在で、書きたいことは多いが、新刊「鉄道廃線トンネルの世界」(発行・天夢人、「旅鉄BOOKS」より)で新旧トンネルのルポを書かせていただいたので、ご覧いただけたら嬉しい。

横川~軽井沢間に鉄道が開通したのは明治26(1893)年。最大66.7パーミル(1,000mで66,7m上る)という国鉄最大の急勾配区間に、ドイツの山岳鉄道で採用されたアプト式のラックレールを設け、専用の機関車を製作して、名だたる難所を克服した。碓氷峠の鉄道開通により信越本線は全通し、その後物流、人流は飛躍的に増大した。

現在の「アプトの道」で通れる旧線のトンネルは10本あり、日本最大の4連アーチ橋・碓井第三橋梁(めがね橋)とともに国の重要文化財にも指定されている。急勾配に設けられたトンネルは各々で造形が異なるなど見どころが多いが、トンネル訪問の際に知っておくと便利なトンネルの入口(坑門、ポータルと呼ばれる)の名称について、略図にしたものを記載する。

※「鉄道構造物探見」(小野田滋著・JTBキャンブックス)より引用。

明治期のトンネルのポータルは「門」の役割も果たすことから様々な工夫が施されてきた。特に扁額や要石(かなめいし)、迫(せり)石(いし)は“見せ場”で、意匠を凝らしたものが多い。また、トンネルにおける煉瓦の積み方にはいくつかの技法があり、地勢などに応じて使い分けられた。明治期の煉瓦トンネルで多く見られるのが「イギリス積み」と呼ばれる技法で、幅の短い「小口」の煉瓦のみの段と、幅の長い「長手」の煉瓦のみの段を、一段ずつ交互に積層させるものだ。一方、碓氷峠の橋梁の歩道脇などの煉瓦には、同じ段の中に幅の短いもの(小口)と長いもの(長手)が交互に両方現われる「フランス積み」と呼ばれる手法も見られ、貴重である。他に、幅の長いもの(長手)のみを積み重ねた「長手積み」という技法もある。

碓氷峠の6号トンネルではさまざまな意匠が見られるので、その一部を紹介する。横川側(めがね橋側)のトンネルの両サイドの「翼壁」と呼ばれる部分は煉瓦で積層され、文字通り鳥が羽を大きく開いて着地するようにも見えて壮観だ。また、ポータルの迫(せり)石(いし)は盾の形をしており、これは装飾の意味もあるが、石と煉瓦の部分の接合を効率よくするための工夫でもあった。

凝っているのが、トンネル内部の入口付近の煉瓦の「目地(めじ)」と呼ばれるモルタルによる接合部で、よく見ると煉瓦と煉瓦の間の「目地」の線がやや盛り上がっている(6号、7号トンネルなど)。これは「覆(ふく)輪(りん)目地」と呼ばれる珍しい技法で、仕上げのディティールにこだわった当時の煉瓦職人の心意気が伝わるものである。それほどまでにこの峠の鉄道の開通は待望され、後の日本の鉄道ネットワーク形成に大きく寄与することになった。

 

【プロフィール】

◇花田 欣也(総務省地域力創造アドバイザー、トンネルツーリズムプランナー)

・総務省 地域力創造アドバイザー

・(一社)日本トンネル専門工事業協会アドバイザー

旅行会社に勤務しながら30歳でJRを全線乗車した鉄道ファンの一方、ライフワークとして全国に残る産業遺産トンネルを歩き、全国でも例のない現道のみの「トンネルツアー」の講師を各地で務めるトンネルツーリズムプランナー

「マツコの知らない世界」などテレビ、ラジオ、新聞等メディアにも数多く登場し、日本の貴重な土木産業遺産の魅力を発信。インフラツーリズムの新たなカタチとして地域活性化に繋げる講演や執筆も精力的に行っている。著書に「旅するトンネル」(一般社団法人本の研究社)。

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10月に新著「鉄道廃線トンネルの世界」(発行:㈱天夢人、「旅鉄BOOKS」シリーズ)を発売。

【公式HP】 https://hanadakin-chiikitnl.grupo.jp/

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